寝るときは部屋を暗くしましょう
以前に明るい部屋で寝るとインスリンが効きにくくなり、浅い睡眠が多くなって深い睡眠が減少し、心拍数が多くなり、心拍変動が低下することを紹介しました(R04/6/22)。これは健常人20人の実験データをとったものでした。今回は大規模集団で心血管系疾患の起こりやすさを検討した成績を紹介します(JAMA Network Open 2025)。
対象はUK Biobankの参加者88,905人(40歳以上の人が対象:平均年齢62.4歳、女性56.9%)です。9.5年間の心血管系疾患のデータを分析しました。
部屋を明るくして寝ている時間の割合をパーセンタイルで分類し、「0-50パーセンタイル」の群を暗くして寝ている群、「91-100パーセンタイル」の群を明るくして寝ている群としました。
「明るくして寝ている群」を「暗くして寝ている群」と比較しますと、
冠動脈疾患リスク 1.32(1.18-1.46)、心筋梗塞リスク 1.47(1.26-1.71)、心不全リスク 1.56(1.34-1.81)、心房細動リスク 1.32(1.18-1.46)、脳卒中リスク 1.28(1.06-1.55)でした。つまり明るくして寝ると心血管系疾患リスクが高くなるのです。とくに心不全リスクと冠動脈疾患リスクは女性で強く、心不全リスクと心房細動リスクは若い人で強くなっていました。
夜はやはり暗くして寝た方が良いようです。
令和8年2月2日
GLP1(+GIP)受容体作動薬と筋肉
GLP1受容体作動薬、GLP1+GIP受容体作動薬は体重を大きく減らします。このときに筋肉も大きく減ってしまわないか心配になりますが、それほど心配しなくてよさそうです。セマグルチド(ウゴービ:GLP1受容体作動薬)とチルゼパチド(マンジャロ:GLP1+GIP受容体作動薬)の成績を紹介します。
はじめにセマグルチドの成績を紹介します(Diabetes Obes Metab 2025)。糖尿病患者で使われる場合はオゼンピックという商品名で1mgまでしか使えませんが、肥満に使われる場合はウゴービという名前で2.4mgまで使えます。この研究ではセマグルチド2.4mgを使っています。
106名(平均BMI 46.3kg/m2)の分析です。体重は12ヶ月で13%減少しました。総脂肪量は7ヶ月で10%、12ヶ月で18%減少しました。除脂肪体重は7ヶ月で3kg減少しましたが、それ以降は一定でした。除脂肪体重は筋肉・骨・内臓・水分などの総量を指します。〜50%が筋肉ですので、おもに筋肉量の指標になります。握力は12か月後で4.5kg増加していました。また、サルコペニア肥満(筋肉が減少している肥満)は12か月後で49%から33%に減少しました。除脂肪体重で補正した安静時エネルギー支出は7ヶ月後から12か月後にかけて増加しました。
セマグルチドで減量した場合、減り続けるのは脂肪のようです。筋肉の減少は少なく、握力はむしろ増加していました。
次にチルゼパチド(マンジャロ)の成績を紹介します(Lancet Diabetes Endocrinol 2025)。この研究では肥満(+過体重)のある2型糖尿病患者が対象で5、10、15mgを使いました。3割の人がSGLT2阻害薬を併用しています。
246名(平均BMI 33.4kg/m2、平均HbA1c8.3%)の分析です。MRI検査を行い、筋肉内脂肪浸潤、筋肉容積、筋肉容積のZスコア(性、BMIをそろえた人の平均筋肉容積と比べた場合の偏り具合)をみています。デグルデクインスリン使用群を対照にしています。
チルゼパチド群を合算しますと、試験開始後52週で筋肉内脂肪浸潤、筋肉容積、筋肉容積のZスコアはそれぞれ、-0.36%point、-0.64L、-0.22 と減少しました。デグルデクインスリン使用群では体重と筋肉容積が増加し、他の変数は変わりませんでした。集団に基づく推定変化と比べると、チルゼパチド群の筋肉容積は同様(つまり体重変化に伴う自然変化程度の減少しか認めなかった、-0.04)でしたが、筋肉内脂肪浸潤(-0.42%point)が大きく減少していました。筋肉容積のZスコアはチルゼパチド15mg使用群でのみ減少しました(-0.18)。
チルゼパチドは筋肉容積を減少させますが、その減少は体重減少に見合う適応範囲内であり、体重減少に見合う以上に筋肉内脂肪浸潤が減少するという好ましい結果をもたらしたと結論しています。
GLP1受容体作動薬、GLP1+GIP受容体作動薬で体重が減少しても筋肉には悪影響がなさそうです。
令和7年12月24日
令和6年国民健康・栄養調査から
令和6年国民健康・栄養調査の概要が発表されました。この中に推定糖尿病患者数が載っています。「糖尿病が強く疑われる者」と歯切れの悪い表現になっていますが、日本の糖尿病の診断基準では血糖が高いことを示す必要があるからです。国民健康・栄養調査のような疫学調査では、HbA1c(NGSP)6.5%以上の人を糖尿病とすることが一般的です。
調査対象は20歳以上の成人です。我が国の推定糖尿病患者数は1100万人でした。これは平成28年の1000万人に比べて100万人ほど増加しています。糖尿病の割合は 男性 17.7%、女性 9.3%でした。糖尿病が多い高齢者でみますと、男性の60歳台で20.5%、70歳以上で26.0%、女性ではそれぞれ11.2%、16.5%でした。糖尿病を指摘されたことのある人で、治療を受けている人の割合は67.4%(男性で73.1%,女性で60.5%)でした。1/3がほったらかしになっているようです。
糖尿病以外のデータも記載されています。都道府県別に示されていますが、大阪人のBMI(肥満指数、体格指数)は男性では低い方から数えて6位(23.3)、女性では同1位(21.2)でした。大阪人の体型は他都道府県よりスマートかもしれません。野菜摂取は、男性15位、女性33位です。大阪の女性は野菜が嫌いな人が多いのかもしれません。なぜでしょうね。
令和7年12月11日
コーヒーを飲むなら甘味料なし
コーヒーをよく飲む人は糖尿病発症リスクが少ない。このことは繰り返して報告されていますが、コーヒーに添える「添加物」についてはあまり研究されていません。今回添加物について報告されましたので紹介します(Am J Clin Nutr 2025)。
研究対象集団(コホート)は看護師研究のコホート2つ(1986-2020年、1991-2020年)、および男性医療従事者研究のコホート1つ(1991-2020年)、計3つです。この3つは疫学研究ではとても有名な米国のコホートです。コーヒー消費量は、それぞれ 2.6杯/日、1.7杯/日、2.1杯/日でした。
3,665,408人・年の観察期間に13,281人の2型糖尿病が発症しました。多変量で補正したのちに、2型糖尿病発症リスクを算出しました。
コーヒー1杯ごとの2型糖尿病発症リスクは
ブラックコーヒー:添加物なし は HR 0.90(0.89-0.92)
+クリーム は 添加しても その影響なし
+砂糖(平均スプーン1杯/カップ) は HR 0.95(0.93-0.97)
+人工甘味料 は HR 0.93(0.90-0.96)
+コーヒーホワイトナー は HR 0.95(0.91-1.00) (相合作用が有意でない)
つまり、何も添加しないブラックコーヒーでは、1杯飲むごとに2型糖尿病の発症リスクは10%減少しますが、砂糖や人工甘味料を入れると発症リスク低下が減少します。クリーム(乳製品由来)は影響がありませんが、コーヒーホワイトナー(植物性)は影響がはっきりしませんでした。
コーヒーを飲むなら甘味料(砂糖や人工甘味料)を入れないのが良いようです。
令和7年10月23日