超加工食品は食べ過ぎてしまう
超加工食品の論文が3つ出ました。
超加工食品は一口で言うと、簡単においしく食べられるように加工された食品のことです。スーパーに並んでいる大量生産された加工食品はほとんどこれです。化学的処理・再形成が行われ、一般家庭では使用されない香料・甘味料・着色料・安定剤・防腐剤・乳化剤などが添加されています。大量生産された菓子パン、スナック菓子、菓子類、加工肉、インスタント食品、ソーダ類などがそうです。
最初の論文は「超加工食品は食べ過ぎてしまう」という論文です(Cell Metabolism 2019)。この研究では20人の参加者に必要2倍量の料理を提供し、参加者の自由判断で食べる量を調節してもらいました。
超加工食品あるいは非加工食品をそれぞれ14日ずつ食べてもらい、食品加工度により食べる量がどう影響されるかをみました。2つの食事群で、提供するカロリー、炭水化物、脂肪、塩分、食物繊維、大栄養素は同じです。
そうすると、超加工食品では非加工食品に比べて〜500kcal/日ほど食べる量が多くなり、増えたカロリー分だけ体重が増加しました。
超加工食品は食べやすく、おいしく感じるように加工されています。止められない、止まらない、というスナック菓子のコマーシャルがありましたが、超加工食品は食べ過ぎてしまうようです。
減量が望ましい人は超加工食品を避けるのが良いでしょう。
令和元年6月28日
フルーツジュースと全死亡
甘味料添加飲料(いわゆるソーダ、コーラ類)が身体に良くないことはよく知られていますが、フルーツジュースでも摂り過ぎると全死亡が増えるようです(JAMA 2019)。
対象は45歳以上の米国人で、REGARDS研究のコホートです(コホートというのは研究対象になった集団のことを言います)。全部で30,183人、その中から心血管疾患、脳卒中、糖尿病の人を除き、さらに食事データがない人を除いた13,440人のデータを解析しています。
平均観察期間は6.0年です。観察している間に1,000人の人が亡くなっています。この研究では飲み物の量を「飲料に含まれる糖質カロリーが総摂取カロリーに占める割合:TE」で見ています。集団全体のTEは8.4%(甘味料添加飲料4.4%、ジュース4.0%)でした。8.4%というと、1日2400kcalを摂取している人なら1日コーラ450mlくらいでしょうか。
総カロリーに占める飲料中の糖質カロリー比(TE)が10%以上の人の場合、5%未満の人と比べると、心疾患死リスクは2.21、全死亡リスクは1.31と高値でした。人種、年齢、性別、学歴、喫煙、アルコール、BMI(肥満指数)、身体活動度、食生活で補正していくとリスクは漸次低下し、全部を補正すると心疾患死リスク1.44、全死亡リスク1.14でした。
気になるフルーツジュースですが、フルーツジュースの摂取が12オンス(360ml)増えるごとに全死亡が24%増えるそうです(全甘味飲料でみると11%増加)。
フルーツジュースはヘルシーというイメージがありますが、必ずしもそうでないようです。糖尿病の方にはお勧めしませんし、糖尿病がなくても控えめにするのがよいでしょう。
令和元年5月27日
世界的にみて日本の食事は良い
195ヶ国を対象に食事と病気の関連を検討した研究が発表されました(Lancet 2019)。マイクロソフトのビル&メリンダ・ゲイツ夫妻から研究資金が出ています。
この研究では、身体に良くない食事項目として
(1) 果物不足:推奨量 250g(200-300)/日
(2) 野菜不足:推奨量 360g(290-430)/日
(3) 豆類不足:推奨量 60g(50-70)/日
(4) 全粒穀物不足:推奨量 125g(100-150)/日
(5) ナッツ・種不足:推奨量 21g(16-25)/日
(6) 牛乳不足:推奨量 435g(350-520)/日
(7) 赤肉過剰:推奨量 23g(18-27)/日
(8) 加工肉過剰:推奨量 2g(0-4)/日
(9) 甘味料飲料過剰:推奨量 3g(0-5)/日
(10) 食物繊維不足:推奨量 24g(19-28)/日
(11) カルシウム不足:推奨量 1.25g(1.00-1.50)/日
(12) 海産物オメガ3脂肪酸不足:
推奨量 250mg(200-300)/日
(13) 多価不飽和脂肪酸不足:推奨量 11%(9-13)/日
(14) トランス脂肪酸過剰:推奨量 0.5%(0.0-1.0)/日
(15) ナトリウム過剰:推奨量 3g(1-5)/日
の15項目を上げています。
赤身の肉は2単位の量(160kcal、80g)だと週2回です。加工肉はウィンナソーセージだと1週間に1本。牛乳は毎日2本と少し飲んで下さい。コーク類は1週間に180mlコップに1/10くらいです。まあ、加工肉や甘味飲料は食べるな!飲むな!というメッセージですね。
この論文では、上記の各項目を摂りすぎる(あるいは不足する)と病気が増加すると仮定します。どれだけ増えるかはメタ分析論文の相対リスクを参考にしています。
塩分については、(1) 塩分摂取が増えると血圧が上がる。(2) 血圧が上がれば心血管系疾患が増える。この (1) と (2) の仮定を掛け合わせています。注意すべき点はこれらの仮定と各項目の摂取量がずれると間違った結論になることです。
指標は、不適切な栄養による死亡数とDALY(障害調整生命年)です。DALYというのは、簡単にいうと「病気、障害、早死によって失われた年数」を示す指標です。
全世界でみると、「不適切な栄養」による死亡数は2017年で1100万人、そして2億5500万DALYsでした。目立つ「不適切な栄養」は、塩分過剰(300万人死亡、7000万DALYs)、全粒穀類摂取不足(300万人死亡、8200万DALYs)、果物不足(200万人死亡、6500万DALYs)でした。
日本のデータを探しますと、
「不適切な栄養」による影響は日本が最も低く、「全死亡数/10万人」97と「DALYs/10万人」2300でした。心血管系疾患についても日本の食事が最も良く、「死亡数/10万人」が69、「DALYs/10万人」が1507でした。
「全死亡数/10万人」の最悪は中国で299、「DALYs/10万人」の最悪はエジプトで10811でした。
食育がいろいろ言われるこの頃ですが、世界的にみて日本の食事は優等生です。ただ塩分の摂り過ぎには注意しましょう。
平成31年4月25日
赤か白か、それが問題?:豚肉の話
日本ではあまり言いませんが、赤肉(red meat)、白肉(white meat)という言葉があります。文字通り、赤みを帯びた肉が赤肉で、白みを帯びた肉が白肉です。
赤色の元はミオグロビンです。米国農業省はミオグロビン量が65%以上の肉を赤肉としています。代表的な赤肉は牛肉や豚肉、白肉は家禽類や魚の肉です。
「赤肉は身体に悪く、白肉は身体に良い」と一般的に言われています。消費者が「豚肉は赤肉 → 豚肉は身体に悪い」と受け止めると豚肉が売れなくなります。そこで米国豚肉協会(National Pork Board)は1987年に「豚肉は白肉」キャンペーンをしました。この目論見が当たって、キャンペーン後の豚肉の売り上げは20%伸びたそうです。
「豚肉は白肉」は料理からみた判定です。栄養学的に豚肉は赤肉ですから、キャンペーンの正当性は微妙です。
豚肉といっても、部位によって栄養組成が大きく異なります。たとえば、ヒレ肉は100g中、脂肪が1.9g(飽和脂肪酸が0.56g)と脂肪があまりありません。一方、ばら肉は同34.6g(12.95g)です。高血圧予防食(DASH食)では赤肉を制限しますが、「脂肪の少ない豚肉」なら魚や鶏肉と交換して問題ないという成績があります(Amer J Nutr 2015)。
カロリーの4割を大豆油から摂るようにして育てた豚肉は飽和脂肪酸が少なくなります。その豚肉を食べるとLDLコレステロールが下がるという報告もあります(Amer J Nutr 2001)。これは特殊飼育の豚肉なので、特別かもしれません。
豚肉と一口に言っても栄養評価はいろいろです。脂の多い部分は避けるのが良いでしょう。
平成31年3月2日