余暇時間の運動と糖尿病性最小血管障害(網膜症、腎臓障害、神経障害)
余暇時間の運動は、仕事で身体を動かすのと異なった健康上のメリットがあります。今回、余暇時間の運動と糖尿病性最小血管障害(網膜症、腎臓障害、神経障害)の関連を検討した成績が報告されましたので紹介します(Diabetes Care 2023)。
この報告をみると、余暇時間の運動はどの運動量であっても最小血管障害を予防するのに効果がありそうです。ただ残念なことに網膜症には効果がないようです。
この研究には2型糖尿病18,092人が参加しました(UK Biobank)。運動量を参加者に自己申告してもらい、週当たりのMET・時間に集計して分析しました。
METというのは「安静時の何倍の強さで運動している」かを示す運動強度の単位です。座って安静にしている状態が1MET、普通歩行が3METsです。運動量は、運動強度に運動時間を掛けてMET・時間で計算しました。
参加者を運動量(MET・時間)で分類しています。
運動なし:0 MET・時間
推奨以下の運動量:0-7.49 MET・時間
推奨運動量:---7.5-14.9 MET・時間
推奨以上の運動量:---15 MET・時間 以上
12.1年経過観察しました。その間に 672人(3.7%)が神経障害を、1,839人(10.2%)が腎障害を、2,099人(11.7%)が網膜症を発症しました。
「運動なし」を基準に最小血管障害の発症リスクを計算しました。
神経障害の発症リスクは
「推奨以下の運動量」で0.71、
「推奨運動量」で0.73、
「推奨以上の運動量」で0.67でした。
腎障害の発症リスクは、それぞれ0.79、0.80、0.80でした。網膜症では発症リスクの減少はありませんでした。
神経障害と腎障害の発症リスクを減らす最低運動量は週に1.5時間の歩行でした。
軽い運動でも神経障害と腎障害の予防が期待できそうです。ぜひ運動しましょう。
令和5年12月25日
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