メトホルミンがコロナ後遺症を少なくする?
新型コロナ感染症が始まった頃に「メトホルミンを服用している人でコロナ重症者が少ない」という観察研究がありました。しかし2つの無作為試験で否定的な論文が発表され、米国国立衛生研究所のガイドラインでは研究的目的以外でメトホルミンを使わないことを推奨しています。
今回「コロナ発症後にメトホルミンを服用すると後遺症が少なくなる」という論文が出ましたので、紹介します(Lancet Infect Dis 2023)。
調査期間は2020年12月30日〜2022年1月28日です。当時はアルファ株、デルタ株でしょうか。発症7日以内、30-85歳、過体重・肥満があり、コロナPCR/抗原検査で陽性の方を対象にしています。
メトホルミンは、初日500mg、2-5日は朝500mg、夕500mg、6-14日は朝500mg、夕1000mgを服用しました。
本研究は初めに重症化予防研究(14日で判定、1304人が完了)をして、メトホルミンに重症化予防効果がないと結論しています(NEJM 2022)。その後に調査期間を延長して後遺症予防研究を始めました。180日時点で少なくとも1回の後遺症調査を完了したのが1126人(564人がメトホルミンを服用、562人が偽薬を服用)でした。女性が632人(44人が妊婦)、年齢中央値45歳、BMI中央値29.8、後遺症の判定は300日時点で行いました。
両群合わせて1126人中93人(8.3%)がコロナ後遺症を発症しました。後遺症発症率はメトホルミン服用群で6.3%、偽薬群で10.4%、ハザード比は0.59(0.39-0.89)でした。症状発現3日以内にメトホルミンを開始した人ではハザード比がさらに低く、0.37(0.15-0.95)でした。
本研究ではイベルメクチンやフルボキサミンの効果も検討していますが、後遺症予防には無効でした。
本研究は精度の高い無作為試験で「コロナ急性期に投与した薬に後遺症予防効果がある」ことを確かめた最初の論文になります。本当にメトホルミンに後遺症予防効果があればうれしいですね。今後の研究を待ちたいと思います。
令和5年7月1日
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