アメリカ糖尿病学会のガイドライン改訂(2013):高血圧について
アメリカ糖尿病学会は毎年ガイドラインを更新しています。2013年も更新され、高血圧の人の治療目標が改定されました。
治療目標が10mmHgほど緩められたわけですが、いろいろなことを説明しています。
(1) 疫学的な研究(観察研究)から:
以上をまとめますと、血圧の低い人は心血管イベントが少ない(これは正しい観察です)。そこで高血圧の人を実際に治療して血圧を下げてみた(これが治療介入研究です)。厳しく血圧をコントロールすると、予想に反して心血管イベントが下がらず悪い影響が出た。これらの結果を踏まえ、血圧の治療目標を緩めた。
なお、ヨーロッパ高血圧学会では2009年のガイドラインで140mmHg未満に目標を緩めています。(1) 130mmHg未満という観察もあるが、140mmHg未満の方が無難。(2) 130mmHg未満という目標は、HOT研究やSyst-Eur研究から熱狂的に引っ張り出されたもので根拠に乏しい(J Hypertension2009)。
注:
日本は現時点では130mmHg未満を勧めています。
心血管イベントとは、心筋梗塞や心不全など重篤な循環器系疾患の急激な発症や増悪をまとめて指す言葉です。
平成25年1月25日
(1) 収縮期血圧の目標140mmHg未満(これまで130mmHg未満)
(2) 若い人で治療の負担がなく達成できるなら、130mmHg未満
(3) 拡張期血圧は80mmHg未満
治療目標が10mmHgほど緩められたわけですが、いろいろなことを説明しています。
(1) 疫学的な研究(観察研究)から:
115/75mmHg以上の血圧で心血管イベント、死亡率が増え、120mmHg以上で末期腎障害が増える。
(2) 無作為化臨床試験(質の高い治療介入研究)から:心血管イベント、脳卒中や腎障害の減少は、140/80mmHg未満の降圧で得られる。しかしさらに低めの血圧にして恩恵があるかどうか、根拠は限られている(ACCORD試験、ADVANCE試験の成績をあげています)。
(3) メタ分析(多くの論文をまとめて分析)から:McBrien 他 (Arch Intern Med 2012)の報告から:
厳格な血圧コントロールは脳卒中を35%減らすが、絶対的リスク減少はわずか1%。死亡率や非致死性心筋梗塞は減らない。
Bangalore 他(Circulation2011)の報告から:
130mmHgを目標にすると、脳卒中が減り死亡率が10%減るが、他の心血管系イベントは減少せず、重篤な副作用が多くなる。アルブミン尿の出現・進行は抑制されるが、進行性腎障害は変わらない。網膜症や神経障害も変わらない。
以上をまとめますと、血圧の低い人は心血管イベントが少ない(これは正しい観察です)。そこで高血圧の人を実際に治療して血圧を下げてみた(これが治療介入研究です)。厳しく血圧をコントロールすると、予想に反して心血管イベントが下がらず悪い影響が出た。これらの結果を踏まえ、血圧の治療目標を緩めた。
なお、ヨーロッパ高血圧学会では2009年のガイドラインで140mmHg未満に目標を緩めています。(1) 130mmHg未満という観察もあるが、140mmHg未満の方が無難。(2) 130mmHg未満という目標は、HOT研究やSyst-Eur研究から熱狂的に引っ張り出されたもので根拠に乏しい(J Hypertension2009)。
注:
日本は現時点では130mmHg未満を勧めています。
心血管イベントとは、心筋梗塞や心不全など重篤な循環器系疾患の急激な発症や増悪をまとめて指す言葉です。
平成25年1月25日
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