食事だけでは片手落ち
運動を大きく分けると、フィットネス(有酸素運動:心肺機能を高める)と筋トレ(レジスタンス運動:筋肉をつける)に分けられます。かつては「歩け歩け運動(有酸素運動)」で、歩いていればそれで良いと考えられていましたが、今は両方とも行うのが良いと考えられています。年配の人によくお話ししますが、筋トレをせずに歩くだけでは転倒骨折リスクが減りません。
今回は「減量時の運動」の話です。運動をせずに食事だけで減量しようとすると筋肉や骨密度が大きく減ります。このことはとくに筋肉や骨の弱い年配の人で問題になります。では減少を防ぐためには、どのような運動を付け加えるのが良いでしょうか。 最近発表された論文を紹介します(NEJM2017)。
この論文では160人の肥満高齢者が参加しています。体重管理プログラムをおこなってもらい、それに3種類の運動のいずれかを行ってもらいました。運動は「有酸素運動」、「レジスタンス運動」、「有酸素+レジスタンス運動」です。体重管理をしない対照群をおいています。運動期間は26週、週3日の運動です。体重管理プログラムは必要カロリーから500-750kcal減らし、良質のタンパク質摂取(1g/kg/日)になるよう栄養士と相談し、1500mgカルシウム、ビタミンD1000IUのサプリをとってもらいました。
まず比べたのは身体活動機能(PPT)です。PPTは、標準の「15.2m歩く、上着を脱いで着る、硬貨を拾う、椅子から立ち上がる、本を持ち上げる、階段を1段上る」に加えて「階段を4段昇り降りする」、「360度向きを変える」ことをしてもらってスコア付けしています。プログラムを達成したのは141人、PPTスコアは運動群すべてが対照群より良い結果でした。最も良かったのが「有酸素+レジスタンス運動」(21%増加)で、次に「有酸素運動」(14%増加)、「レジスタンス運動」(14%増加)でした。
そのほかにも幾つかの項目を比べています。最大酸素消費量は「有酸素+レジスタンス運動」、「有酸素運動」 > 「レジスタンス運動」でした。筋力増強は「有酸素+レジスタンス運動」、「レジスタンス運動」 > 「有酸素運動」でした。体重は全運動群で9%減、対照群では減りませんでした。
体重管理プログラムで残念なことは、運動しても除脂肪体重と骨密度の減少を止められなかったことです。ただ減少の程度は「有酸素+レジスタンス運動」、「レジスタンス運動」で少なく、「有酸素運動」で大きめでした(骨密度はそれぞれ、1%減、0.5%減、3%減)。除脂肪体重が減っても筋力が増えているので、転倒リスクが減る可能性がありますが、実際に減るかどうかまでは分かりません。
まとめますと、減量時に運動しますと身体活動機能(PPT)が改善します。減量に伴い除脂肪体重と骨密度が減りますが、「有酸素+レジスタンス運動」を行うとその悪さが少なくなります。もっと効果的な蛋白・ビタミンDの摂りかたがあるかについては、研究の発展に期待します。
平成29年6月8日
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