糖尿病の歴史36 インスリン発見前夜 ~血糖測定法の進歩 (3)
血糖測定法の続きです。
1915年にルイスとベネディクトが画期的な血糖測定法を発表します。必要血液量は2mlです。彼らはピクリン酸を用いて手順を単純化しました。ピクリン酸は蛋白を除く作用があり、同時に糖と反応して赤く発色する性質があります(この発色で糖を測定します)。このため蛋白を完全に除去する必要がなくなりました。
改良はさらに続きます。ルイス・ベネディクト原法ではフラスコ内容物を直火で蒸発させる手順があります。マイヤーズとベイリーは最初の血液希釈度を下げることによりこの手順を省略し、100Cのビーカー内で温浴させることで発色を強め、手順をさらに単純化させました(1916年)。ついに洗練された血糖測定法ができたのです。
硝子製の注射器で約2.5mlの血液を採取する。注射器は血液凝固を防ぐため、あらかじめ蓚酸カリウムで濡らしておく。採取した血液は少量の蓚酸カリウムを含む試験管に移す。ピペットで2mlの血液を15-20ml容量の遠心管に移す。ピペットは8mlの水で洗い、その水も遠心管に入れる。この操作で血液を5倍に希釈し、完全に溶血させる。0.2mgの乾燥ピクリン酸を添加し、撹拌棒でよく混和する。蛋白を完全に沈殿させ、溶液をピクリン酸で飽和させ、時々混和しながら数分置く。次に遠心機にかけ、4cm径の濾紙で溶液を濾過し、上清を乾燥した試験管に移す。3mlを背の高い試験管に移し、1mlの20%炭酸ナトリウム溶液を加え、15分間ビーカー内で100Cで温浴させる。この温浴で溶液は完全に発色する(これ以上温浴しても色は変わらない)。室温まで冷却し、発色度合に合わせて水で薄め、比色計で測定する。
バンティングとベスト(1921年インスリン発見)が採用したのは、マイヤーズとベイリーの変法です。
平成28年3月24日
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